石井不老(1899–1964)は、昭和期に活躍した備前焼の陶芸家で、細工物や轆轤の名手として知られています。明石で戸田秋嶺に陶芸を学んだのち備前に移り、茶陶を中心に独自の作風を築きました。なかでも代表作として知られるのが、般若心経を一巻ずつ宝瓶の胴に刻んだ「心経宝瓶」で、千巻に及ぶ制作を十数年かけて完成させたと伝えられています。1954年には岡山県重要無形文化財保持者となり、晩年には赤楽の技法を研究し、独自の赤焼にも取り組みました。

石井不老の作品には、備前の土が持つ素朴で温かな表情と、確かな造形技術が見事に調和しています。特に宝瓶は、掌に収まる小さな器でありながら、胴のふくらみや注口、蓋に至るまで細やかな神経が行き届き、彫り込まれた文字にも静かな精神性が感じられます。華美な装飾に頼らず、土そのものの質感と造形によって深い味わいを生み出しているところに、不老作品ならではの魅力があるといえるでしょう。

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石井不老

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