楠部彌弌(1897–1984)は、京都に生まれ、近代京都陶芸を代表する陶芸家の一人です。本名は彌一。若くから陶芸を単なる生活工芸ではなく、一つの芸術表現として捉え、古陶磁の研究を重ねながら独自の作風を築きました。とりわけ、色を加えた磁土を幾重にも塗り重ね、柔らかな色彩と立体感を生み出す彩埏(さいえん)の技法で知られています。白磁や青磁、色絵にも優れ、1978年には文化勲章を受章しました。

楠部彌弌の作品を見ていると、まず感じるのは、磁器でありながらどこか絵画のような柔らかさです。花や鳥、鹿などの意匠は写実的に描き込むのではなく、淡い色の重なりの中から静かに浮かび上がり、器面に深い奥行きを生み出しています。京都市京セラ美術館にも《紅白梅彩埏香炉》などが所蔵されています。 私には、彌弌の陶芸は華麗さを競うのではなく、色と形を静かに積み重ねながら気品を生み出す芸術のように感じられます。近代京都陶芸らしい洗練と、独自の色彩感覚が美しく調和しているところが大きな魅力です。

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楠部彌弌

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