小杉放庵(1881–1964)は、栃木県日光に生まれ、洋画と日本画の双方で独自の世界を築いた画家です。若い頃は小山正太郎に学び、洋画家として文展などで活躍しましたが、やがて東洋の古典や水墨、文人画への関心を深め、次第に自由で簡潔な筆づかいへと作風を変化させました。人物、山水、花鳥などを題材に、詩や書にも通じる伸びやかな表現を残しています。
放庵の作品には、技巧を細かく見せるよりも、対象の持つ雰囲気を一気に捉えるような軽やかさがあります。線はおおらかで、ときに素朴にも見えますが、その中には長年の修練に裏付けられた確かな造形感覚があります。洋画と日本画という枠を自然に越え、描くことそのものを楽しんでいるような自由さが感じられます。肩の力が抜けた中に深い味わいが残るところが、小杉放庵の大きな魅力だと思います。