大樋年朗(1927–2023)は、金沢に生まれた現代陶芸家で、のちに十代大樋長左衛門を襲名し、晩年は大樋陶冶斎と号しました。東京美術学校では陶芸ではなく鋳金を学び、その造形感覚を作陶へ生かした点に大きな特色があります。大樋焼伝統の飴釉による茶陶を受け継ぎながら、花器や壺、陶壁などにも領域を広げ、伝統工芸の枠にとどまらない現代的で力強い作品を発表しました。1985年に日本芸術院賞、1999年に日本芸術院会員となり、2004年に文化功労者、2011年には文化勲章を受章しています。
大樋年朗の作品には、土の温かさと彫刻のような力強さが同居しています。ことに飴釉の作品では、深い褐色の釉肌が光を受けて微妙に表情を変え、素朴な中にも堂々とした品格を感じさせます。一方、現代的な花器や造形作品には大胆な面や線が現れ、伝統的な大樋焼とは異なる新鮮な緊張感があります。私には、古い技法を守ることだけを目的とせず、「大樋焼で何ができるのか」を生涯問い続けた作家のように映ります。伝統と現代造形が自然に溶け合うところに、大樋年朗作品ならではの魅力があると思います。