土田麦僊(1887–1936)は、新潟県佐渡に生まれ、近代日本画に新しい感覚をもたらした画家です。京都で竹内栖鳳に学び、のちに小野竹喬や榊原紫峰らと国画創作協会を結成しました。日本画の伝統を大切にしながら、西洋絵画の構成や色彩にも関心を寄せ、人物や花鳥を端正で明るい画面にまとめています。古典を守るだけでなく、時代に合った日本画を自らの感覚で探し続けた作家でした。
麦僊の作品を見ていると、形や色がすっきり整理されている一方で、画面には柔らかな温度が残っています。人物の姿には品があり、花や鳥にも落ち着いた生命感があります。伝統と新しさを無理に対立させず、その両方を自然に溶け合わせたところに土田麦僊の魅力があるように感じられます。静かな画面の中に、近代日本画を前へ進めようとする意志が確かに息づいています。