今泉今右衛門は、江戸時代以来、鍋島藩窯の伝統を受け継いできた有田を代表する陶家で、その名は代々襲名されています。とりわけ色鍋島を中心に、染付の藍と赤・黄・緑の上絵を端正に組み合わせ、格調高い色絵磁器の世界を築いてきました。今右衛門窯の色鍋島の技術は国の重要無形文化財として認定されており、現在の十四代今泉今右衛門も2014年に「色絵磁器」の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。
今右衛門の作品を見ていると、華やかな色絵でありながら、不思議なほど静けさを感じます。余白を十分に残した構図や、細く端正な線、抑制の利いた赤・黄・緑の配置には、単に「美しく飾る」以上の緊張感があります。青みを帯びた磁肌の上に草花や自然の意匠が浮かぶ様子は、器そのものが一枚の日本画になったようでもあります。
私が特に魅力を感じるのは、豪華さを前面に出さず、それでも一目で上質と分かる品格です。色鍋島の伝統を守りながら、十三代の吹墨・薄墨、十四代の現代的な表現へと新しい美を重ねてきたところに、今右衛門という名跡の本当の強さがあるように思います。