藤本能道(1919–1992)は、東京に生まれた昭和を代表する陶芸家です。東京美術学校で工芸を学び、富本憲吉や加藤土師萌らの影響を受けながら、色絵磁器の表現を深めていきました。草花や鳥、果実など身近な自然を題材とし、写実的でありながら絵画的な余情を感じさせる独自の作風を築き、1986年には色絵磁器の重要無形文化財保持者である人間国宝に認定されました。
藤本能道の作品には、磁器の白い肌を一枚の画面のように扱う感覚があります。鳥の羽や木の実、葉の色づきなどが繊細に描かれていますが、単なる写生ではなく、そこには季節の空気や静かな時間まで感じられます。私には、器と絵画の境界を自然に越え、色絵磁器に詩情を与えた作品のように映ります。華やかさよりも、自然を見つめる穏やかな眼差しが伝わってくるところに、藤本能道ならではの魅力があると思います。