松岡映丘(1881–1938)は、兵庫県に生まれ、近代における大和絵の再生に力を尽くした日本画家です。橋本雅邦や山名貫義に学び、東京美術学校を卒業後は同校で後進の指導にもあたりました。古い絵巻や装束、歴史風俗を丹念に研究しながら、それらを単に再現するのではなく、近代的な構成や人物表現へと置き換えたところに特色があります。新興大和絵会などの活動を通して、歴史画に新たな可能性を示しました。
映丘の作品には、古典に根ざした上品な色彩と線の美しさがありながら、人物には意外なほど生々しい感情が感じられます。衣装や風俗は細やかですが、それが単なる時代考証に終わらず、画面の静かな物語へと結びついています。遠い昔の出来事を描きながら、そこに生きた人々の心まで現代へ引き寄せて見せる作品のように映ります。古典を深く知ることによって、逆に新しい絵画を生み出したところが松岡映丘の大きな魅力です。