金重素山(1909–1995)は、岡山県備前市伊部に生まれた備前焼の陶芸家です。備前焼中興の祖として知られる兄・金重陶陽に学び、長く窯焚きを支えながら土と炎の性質を徹底して身につけました。その後独立し、桃山時代の古備前、とりわけ緋襷の美に深く取り組み、電気窯を用いて鮮やかな緋色を引き出す独自の焼成法を完成させました。茶碗、水指、花入、徳利など茶陶を中心に制作し、1983年には岡山県指定重要無形文化財保持者に認定されています。
素山の作品を見て感じるのは、備前の土の素朴さの中に潜む、静かな品格です。とりわけ緋襷の作品では、淡い土肌を横切る朱赤の線がまるで筆で描かれたように現れ、偶然の窯変でありながら一幅の抽象画を思わせます。兄・陶陽の堂々とした造形とは少し異なり、素山には柔らかさや穏やかな余情が感じられます。古備前を深く見つめながら、炎任せにするだけでなく焼成そのものを研究し、伝統の景色を自らの方法で再構築したところに、金重素山ならではの魅力があると思います。