永樂保全(1795–1854)は、江戸時代後期の京焼を代表する陶工で、千家十職の土風炉・焼物師を担った十一代善五郎です。十代了全の養子となり、茶の湯の世界に深く関わりながら作陶を展開しました。1827年には紀州徳川家の御庭焼・偕楽園焼に携わり、永樂の銀印を拝領しています。交趾、祥瑞、染付、赤絵、金襴手など幅広い技法を巧みに取り込み、それまで土風炉を中心としていた家業を、華やかな茶陶の世界へ大きく広げた人物でもあります。
保全の作品には、京焼らしい雅やかさと、茶の湯の道具としての節度が絶妙に同居しているように感じます。鮮やかな色絵や金彩を使った作品でも決して装飾が過剰にならず、小さな茶碗や香合の中に格調ある世界が凝縮されています。とりわけ交趾や金襴手の作品には、異国の陶磁器から学んだ意匠を京都的な美意識へ置き換える巧みさがあり、単なる「写し」を超えた保全独自の感性が感じられます。
永樂保全は永樂家の焼物を一段大きな舞台へ押し上げた革新的な名工に映ります。古典を深く理解しながら、それを茶席で映える華やかさへ変換する。その洗練された感覚こそが、今日まで保全作品が高く評価され続ける大きな理由かもしれません。