川合玉堂(1873–1957)は、愛知県に生まれ、近代日本画を代表する画家です。京都で円山・四条派の写生的な表現を学んだのち東京へ移り、橋本雅邦にも師事しました。山里や渓流、農村の暮らしなど、日本の身近な自然を主な題材とし、柔らかな筆致と落ち着いた色彩によって、懐かしさと静けさを感じさせる風景画を数多く残しました。1940年には文化勲章を受章しています。
玉堂の作品を見ていると、雄大な景色を誇張して見せるのではなく、人の営みと自然が穏やかに溶け合う瞬間を大切にしていることが伝わってきます。山道を行く人や川辺の家、雨や雪に包まれた村などには、派手さはなくても深い情緒があります。玉堂の絵は日本の風土そのものを静かに記憶しているように感じられます。眺めるほどに心が落ち着き、季節の空気まで伝わってくるところが大きな魅力です。