富岡鉄斎(1837–1924)は、京都に生まれ、明治から大正期にかけて活躍した文人画家です。儒学や国学、漢詩、仏教など幅広い学問に親しみ、各地を旅しながら古典や名勝への理解を深めました。山水や人物、故事を題材に、細部を整えることよりも、筆の勢いや画面全体の気分を重んじた自由な作品を数多く残しています。晩年になるほど筆遣いは大胆さを増し、日本最後の文人画家とも称される存在となりました。
鉄斎の作品を見ていると、巧みに描こうとする意識を超えて、筆そのものが楽しげに動いているような印象を受けます。山や人物は時に誇張され、形も自由ですが、その中には豊かな教養と人生経験が自然ににじんでいます。鉄斎の絵は目の前の景色を写すものではなく、古典や旅の記憶、詩や思想まで一つの画面に注ぎ込んだ作品のように感じられます。豪快さの中に知性とユーモアがあり、見るほどに味わいが深まるところが大きな魅力です。