中村宗哲は、京都で代々続く漆芸の名跡で、千家十職の塗師を務めてきた家です。茶の湯に用いる棗、香合、盆、菓子器などを中心に制作し、黒漆や朱漆の美しさを生かしながら、蒔絵や意匠を控えめに施した品格ある作品を残してきました。歴代は表千家・裏千家・武者小路千家との深い関わりの中で、茶席にふさわしい形や使い心地を追究し、それぞれの時代の感覚を取り入れながら伝統を受け継いでいます。
中村宗哲の作品を見ていると、華やかな技巧よりも、漆の艶や器の輪郭そのものに美しさを感じます。一見すると簡素な棗や盆であっても、手に取ると形の収まりがよく、光を受けた漆肌には静かな奥行きがあります。私には、宗哲の漆器は単独で強く主張するのではなく、茶碗や菓子、茶室の空間と調和することで本来の美しさを表す道具のように映ります。控えめでありながら確かな品格を備えているところに、中村宗哲作品の大きな魅力があると思います。