藤原啓(1899–1983)は、岡山県備前市に生まれた備前焼の陶芸家です。若い頃は文学を志し、詩や小説の世界に身を置いていましたが、のちに郷里へ戻り、40歳を過ぎてから本格的に作陶の道へ入りました。金重陶陽らの薫陶を受けながら古備前を学び、華美な技巧に頼らず、土の質感と素直な造形を大切にした独自の備前を築きました。1970年には備前焼の重要無形文化財保持者である人間国宝に認定されています。
藤原啓の作品を見ていると、作為をできるだけ抑え、土そのものの表情を静かに引き出しているように感じられます。徳利や壺、花入などには、少しゆったりとした形と温かな焼き肌があり、眺めるほどに穏やかな味わいが増していきます。私には、その作品には文学を歩んだ人ならではの余韻があり、強く語りかけるのではなく、見る人の心に静かに残る陶芸のように映ります。素朴さの中に深い品格を宿しているところが、藤原啓ならではの魅力だと思います。