山口蓬春(1893–1971)は、北海道に生まれ、昭和期の日本画に新しい感覚をもたらした画家です。東京美術学校で学び、当初は伝統的な日本画を基礎としながら制作しましたが、やがて西洋絵画や近代的なデザイン感覚にも目を向け、明るい色面と簡潔な構成による独自の作風を築きました。花鳥や静物、人物などを題材に、対象を整理して見せることで、日本画に清新で都会的な空気を取り入れた点に特色があります。1965年には文化勲章を受章しました。
蓬春の作品を見ていると、古典的な日本画とは異なる、すっきりとした明るさがまず印象に残ります。花や鳥、器物などは細かく描き込みすぎず、色と形の配置によって画面全体の美しさが整えられています。伝統的な技法を守ることにとどまらず、自分の時代にふさわしい日本画の姿を静かに作り直した作品のように感じられます。洗練された構成の中に、自然への穏やかな眼差しが残っているところが山口蓬春の大きな魅力です。