加藤卓男(1917–2005)は、岐阜県多治見に生まれた、戦後日本陶芸を代表する陶芸家です。美濃の窯元に生まれながら、その関心を遠く古代ペルシアへと広げ、現地調査を重ねながら、かつてイスラム陶器を彩った神秘的なラスター彩や鮮烈な青釉の研究に取り組みました。また宮内庁正倉院事務所の依頼を受け、長年の研究によって正倉院に伝わる三彩陶器の復元にも成功しています。1995年には三彩の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。
加藤卓男の作品を前にすると、まず目を引くのは、どこか異国の夜空を思わせる色彩の深さです。青釉の澄んだ青、ラスター彩の金属的に揺らめく光、三彩の豊かな色の流れには、古代陶磁への憧れと現代作家としての感性が重なっています。
私には加藤卓男の陶芸は、古い技法を単に復元した作品というより、シルクロードを渡ってきた陶磁の記憶を、現代の器の中にもう一度呼び覚ましたもののように感じられます。歴史研究の確かさと幻想的な美しさが一つの作品の中で共存しているところに、加藤卓男ならではの大きな魅力があります。