中里太郎右衛門は、佐賀県唐津に続く唐津焼の名門に受け継がれてきた名跡です。なかでも十二代中里太郎右衛門(1895–1985)は、のちに中里無庵と号し、近代唐津焼の復興に大きく貢献しました。古窯跡の調査や古唐津の研究を重ね、叩き、轆轤、釉薬、窯焚きといった伝統技法を見直しながら、絵唐津、斑唐津、朝鮮唐津などに格調ある作風を築きました。1976年には「唐津焼」の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。
作品から感じられるのは、土と炎の働きを無理に整えず、その自然な表情を器の美しさとして受け入れるおおらかさです。力強い造形の中にも茶陶らしい落ち着きがあり、釉薬の流れや窯変、わずかな歪みにまで深い味わいがあります。私には、古唐津をそのまま再現したというより、そこに宿る素朴さや力強さを現代に生かした陶芸のように映ります。使うほどに景色が深まり、静かな存在感を増していくところが大きな魅力だと思います。